相続した土地・建物について、相続を原因とする所有権移転登記を行います。
登記申請書と記載例は、法務局のサイトで公開されています。
登記申請には、申請書と被相続人と全相続人の戸籍謄本・住民票などと、相続関係説明図の添付が必要です。
また、法務局での事前相談が大切です。
概要
登記申請なんてやったことないけど、だいじょうぶかな...
法務局のサイトに丁寧な記載例があるわよ。
必要書類さえ揃えば、後は正確に転記するだけなの。
法務局を訪問して事前相談すれば完璧ね。
手続き方法は、法務局のサイトで公開されています。
登記手続きの流れ
登記申請書を作成する | 法務局のサイトからダウンロード |
法務局で事前相談する | 不動産のある土地を管轄する法務局を訪問 |
登記申請書を提出する | 事前相談していれば郵送可 |
登記識別情報通知を受け取る | 郵送可 |
申請用紙をダウンロードする
登記申請書の書式と記載例は、法務局のサイトから、Word、またはPDF形式でダウンロードできます。
遺言書に従う場合、遺産分割協議による場合、法定相続割合による場合の、それぞれが用意されています。
配偶者居住権の登記
配偶者居住権は、建物の相続登記が終わった後に、配偶者と建物の相続人が連名で登記申請します。
配偶者居住権の登記申請書は、相続登記の申請書と同時に提出できます。
なお、配偶者居住権を登記するときは、登記義務者(建物の相続人)の印鑑証明書は、発行から3ヶ月以内のものに限られます。
また、添付書類として、登記原因証明情報の書面も作成する必要があります。
登録免許税は、建物の固定資産税評価額の0.2%です。
詳細は、法務局の記載例(24)配偶者居住権の登記申請書を参照してください。
登記申請書を作成する
法務局が公開している登記申請書はWordなんだね。
そうね。
PDFを印刷して手書きしてもいいけど、Wordの方がキレイに仕上がるわ。
記載例に従って、正確に記入してね。
登記申請書は一人一枚で済むのかな?
いいえ、登記の目的と相続人の組み合わせごとに作り分ける必要があるの。
提出は同時にできるのよ。
具体的な作成方法は、法務局のサイトからダウンロードした記載例の<解説及び注意事項等>に記載されています。
登記申請書の作成単位
登記申請書は、被相続人及び申請人(相続人)の所有形態ごとに記載内容が異なるため、それぞれ別に作り分ける必要があります。
被相続人の所有形態 | 相続人の所有形態 |
---|---|
単独 | 単独 |
単独 | 相続人で共有 |
共有 | 単独で持分を引き継ぐ |
「登記の目的」と、「申請人」が異なるときは、それぞれ申請書を作成します。
複数の登記申請書を同時に提出するときは、各申請書の右上に、「枚数/総枚数」を記入します。
申請書に記載する文字
元号は、和暦です。
金額、数量、年月日、番号の数字は、アラビア数字(0・1・・・9)とします。
住所・地番などの所在は、戸籍謄本や不動産登記簿謄本の表示(二丁目4番10号)に合わせ、漢数字とアラビア数字が混在します。
金額、数量は半角数字(3,000円)、年月日は1桁だけ全額(令和2年10月3日)、所在や不動産番号は全て全角にすると見やすいです。
登記の目的
被相続人の不動産の所有形態により異なります。
目的が異なる場合は、それぞれ別の登記申請書を作成します。
被相続人が単独所有
「所有権移転」
被相続人が共有
「〇〇 〇〇持分全部移転」(〇〇 〇〇は被相続人の氏名)
原因
提出日ではなく、相続開始日を記載します。
「令和〇年〇月〇日 相続」
申請人
単独所有であれば、相続人の住所氏名を記載し、持分の記載はありません。
相続人が共有するときは、それぞれの住所氏名と持分を記載します。
共有者が異なる場合は、別の登記申請書を作成します。
連絡先の電話番号は、確実に連絡を受けることができる番号(携帯電話)が望ましいです。
添付情報
添付情報は、具体的には次のものを指します。
登記原因証明情報
- 遺産分割協議書
- 遺産分割協議書に押印された全ての実印の印鑑証明書
- 相続関係説明図
- 被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本
- 被相続人の戸籍の附表
- 被相続人の住民票の除票
- 遺産分割協議書に記載された相続人全員の戸籍謄本
住所証明情報
- 登記を申請した相続人全員の住民票
評価証明書
- 相続開始日の年のもの(4月中旬以降に取得可)
登記識別情報の通知を希望しません。
チェックしないで、そのままにします。
申請日
令和〇年 月 日としておいて、提出日に手書きで書き入れてもよいです。
提出先の法務局
登記する不動産のある法務局で、各県ごとにある法務局の支局または出張所になります。
「〇〇(地方)法務局 〇〇支局(出張所) 御中」と記載します。
法務局の記載例にはありませんが「御中」を付けます。
課税価格
登記対象の不動産の固定資産評価額の合計額です。
円単位で合計した後、千円未満を切り捨てた額を記載します。
評価証明の記載によって異なります。
評価額がある | その額 |
非課税 | 近傍価額 |
記載がない | 自分で計算※ |
※評価証明に記載がない建物の評価方法は、次のとおりです。
登録免許税
計算方法
課税価格に0.004(0.4%)を掛けて、百円未満を切り捨てた額です。
登録免許税には下限額があり、計算した額が千円未満のときは、登録免許税は1,000円になります。
計算例
共有持分の移転の場合
課税価額は、固定資産税評価額の持分割合に応じた額になります。
不動産の表示
記載例のとおりです。
登記簿謄本にあるとおり、正確に転記します。
附属建物がある建物の「此の不動産の価格」は、主建物と附属建物の評価額合計を記載します。
収入印紙の貼付台紙を追加する
登録免許税は、登記申請書に収入印紙を貼付することで納付します。
建前では余白に貼付することで済みますが、貼付用の台紙を追加してそれに貼付します。
左上に「収入印紙貼付台紙」と記入し、登記申請書の最後に追加します。
ホチキスで綴じる
登記申請書と収入印紙の貼付台紙を揃え、左辺を2ヵ所ホチキス留めします。
各ページ間には、申請人欄に押印した印鑑で契印します。
原本還付の準備
原本還付される書類と方法は、提出する法務局に確認します。
コンビニで取得した各証明書は、原本還付に適さない場合があります。
戸籍謄本の還付
戸籍謄本等の登記原因証明情報に該当する書類は、相続関係説明図を添付することで還付されます。
その他の書類の還付
住所証明情報、評価証明に該当する書類は、コピーを同時に提出することで返却してもらえます。
コピーはA4サイズに統一し、左辺をホチキス止めしたら、申請人欄で押印した印鑑で契印します。
コピーの最初のページの左上に、「これは、原本の相違ありません。 〇〇 〇〇 印」(〇〇 〇〇は申請人の氏名)と記載し、申請人欄で押印した印鑑で押印します。
原本還付の時期
添付書類の還付は、登記が完了した後の、登記識別情報の受け取りと同時になります。
Wordでの作成例
被相続人の単独所有と共有の2通を作成しています。
法務局のサイトからダウンロードしたものを使用しています。
法務局で事前相談する
登記申請書ができたから、事前相談に行ってくる。
遠いから泊りになるけど、預金の凍結解除も一緒にやってくるよ。
法務局は電話で予約しておいてね。
担当者は優しいし、その場で添削してもらえるわ。
直してから改めて提出すれば、確実に登記できるわよ。
登記申請書と添付書類を持参する
登記申請書が完成したら、提出先の法務局を訪問し、登記申請書と添付書類を全て持参し、誤りがないか確認してもらいます。
電話で予約する
相続人自身で登記申請することを伝え、その事前確認として相談日時の予約を取ります。
平日限定で、かつ遠方である可能性がありますが、その場で添削や登録免許税の検算、添付書類の過不足などを確認してもらえます。
また、法務局は相続人自身による申請に対して概ね好意的です。
登記申請書を提出する
法務局の事前相談で指摘されたとおりに直したよ。
添付書類も確認できたし、後は提出するだけだ。
事前相談をパスしていれば何の心配もないわね。
郵送で申請するときは、方法を確認しておいてね。
レターパック不可の場合があるわ。
書留で郵送する
登記申請書と添付書類の提出は、法務局での事前相談をパスしていれば郵送でも可能です。
郵送には、レターパック赤では不可で、書留郵便に限られています。
郵送による申請で不備があると、訂正に出向くか、一旦却下してもらうことになります。
登記完了後に受け取る書類を郵送してもらうには、返信用封筒(宛名記入済)と、本人限定郵便にかかる切手を同封します。
法務局に持参する
法務局の窓口に持参することもできます。
このときは、再度内容を確認されるので、訂正に備えて申請書に押印した印鑑を持参します。
申請書の提出時に、受付済の書面を渡されます。
登記完了時の引換券のようなものなので、大切に保管します。
登記完了までは概ね一週間です。
登記識別情報通知を受け取る
登記申請書を提出したけど、何の連絡もない。
完了予定日まで何の連絡もなければ、登記できてるってことよ。
電話で確認してみましょう。
よかった!
終わってるって。
登記完了証と登記識別情報通知が受け取れるわ。
郵送なら、本人限定郵便で送られてくる。
登記識別情報通知って何?
権利証のことよ。
なくすと面倒だから、大切に保管してね。
あと、登記簿謄本を取得して、自分の名義になっているか確認しましょう。
登記が完了すると、登記申請に対する登記完了証と、権利証となる登記識別情報通知が受け取れます。
申請書の提出時に、おおよその完了日が知らされるので、電話で確認してから受け取りに行きます。
原本還付を申請した添付書類も、このときに受け取ります。
受け取り時は、登記申請の提出時に受け取った受付済の書面と、申請書に押印した印鑑を持参します。
郵送で受け取るには、返信用封筒(宛名記入済)と、本人限定郵便にかかる切手が必要です。
登記完了証
登記完了証は、提出した登記申請書に対して発行されます。
登記識別情報通知
登記識別情報通知は、登記申請した不動産の一筆ごとに発行されます。
いわゆる権利証です。
登記完了後の登記簿謄本を確認する
登記申請した全ての土地・建物の登記簿謄本を取得します。
権利部(甲区)の最後に、相続人の住所氏名が記載されていれば、相続登記は完了です。
謄本の所有者欄に自分が追加されてるぞ!
これで相続の登記手続きは完了ね。
おつかれさまでした!