農地や森林を相続したとき

農業と林業は行政の管理下で保護されているため、農地と山林の所有者は変更を届け出る必要があります。
相続したときは所定の手続きが必要です。
届出の提出先は、その土地の各市区町村です。

森林に関する情報は、各都道府県のサイトで公開されています。

農地・森林を相続したときの注意点

畑と共有の保安林を相続したんだ。

どちらも、市区町村への届出が必要ね。

農地や森林を相続したときは、必要となる手続きがあるので注意が必要です。
農地と森林は、相続した土地の地目だけでは一概に判断できません。
手続きが必要となる可能性のある土地を相続したときは、市区町村の担当窓口へ確認しましょう。

所有者変更の届け出が必要

農地・森林ともに所有者変更の届け出が必要です。
怠った場合、過料を課す規定があります。(適用例はないようですが)

農協・森林組合への出資の有無を確認

被相続人が農地を所有していた場合、農協に出資している可能性が高いです。
相続後に営農する意向があれば、出資金も解約せずに相続した方がよいでしょう。
また、山林や保安林を所有していた場合は、森林組合の組合員であった可能性があります。
森林組合の出資証券や、森林組合名義の預金通帳がないか確認しましょう。

注意する地目

地目農地に該当森林に該当
牧場
原野
山林
保安林
〇 該当 △ 可能性あり

農地を相続したとき

農地を相続したんだけど、これからどうしょうかな。

登記が終わったら、その土地の農業委員会に届出が必要になるわ。
今後の活用についても一緒に相談できるのよ。

取得届を提出する

農地と思われる地目の土地を相続したら、市区町村の農業委員会に、農地に該当しているか確認します。
農業委員会は、通常は市区町村の産業関係部課の中にあります。
農地に該当していれば、「農地法第3条の3第1項の規定による届出書」を作成して農業委員会に提出します。
届出書の書式は、農業委員会の窓口または市区町村のホームページなどから入手できます。
なお、届出書の提出期限は、移転登記完了後遅滞なく、となっています。

農地の相続等の届出のお願い(農林水産省)

今後の農地の扱いを相談する

農地の相続後は、営農する・賃貸する・放置するなどの選択肢があります。
自分の希望を伝えて、どのように扱っていけばよいか相談しましょう。
農地転用の可能性の確認や、賃貸や売却の支援も受けられます。

農地が森林簿に登録されていないか確認する

山林・保安林に限らず、農地や原野であれば、その一部(防風林や隣接している林など)が森林簿に登録されている場合があります。

森林を相続したとき

共有の保安林も相続したんだけど、どうしよう...

その土地の市区町村に届出が必要になるわ。
保安林だと塩漬けね...

取得届を提出する

地域森林計画の対象となっている森林を相続したときは、届け出が必要です。
届け出の対象となる森林かどうかは、その土地の市区町村に確認します。
地目は、山林と保安林に限りません。
実際に林がある土地は、全て確認しましょう。
対象であれば、「森林の土地の所有者届出書」を作成して、担当部課へ提出します。
届出書の書式は、担当部課の窓口または市区町村のホームページなどから入手できます。
なお、届出書の提出期限は、移転登記完了から90日以内となっています。

森林の土地の所有者届出制度:林野庁

森林組合に相続手続きする

相続人が森林簿に登録されている森林を所有していたときは、森林組合の組合員である可能性があります。
森林組合の出資証券や森林組合名義の預金通帳があれば確実に組合員です。
この場合は組合所定の相続手続きが必要です。
ただし、森林組合が既に解散しているときは、手続きは不要です。
森林組合の有無も、市区町村の担当部課で確認できます。

森林簿の閲覧

森林簿って、県の林務課に行かないともらえないのかな...

各県が森林簿のデータをサイトで公開しているわ。
それを見れば、内容が確認できるわよ。

森林情報共有システムを活用する

森林簿は、各県の林務課に閲覧の請求ができますが、窓口へ出向くのは面倒です。
各県が森林情報の共有ためのホームページ(森林情報共有システム)を開設していますので、そちらを利用します。
地域森林計画の対象となっている森林に関する情報は、ここから取得できます。

(静岡県の例)

https://fgis.pref.shizuoka.jp/

森林簿に登録されていた場合は、相続税の立木の評価に森林簿の登録内容が必要になります。
また、「森林の土地の所有者届出書」に添付する位置図も、このシステムからダウンロードできます。

森林情報共有システムで確認できるもの

森林簿

林小班、樹種、林齢等の情報が確認できます。
これらの項目は、相続税の立木の評価に必要です。

樹種スギ,ヒノキ,マツ,クヌギなどの樹木の種類
混交歩合2種類以上の樹種が混在する森林で、樹種別の立木材積による百分率
林齢森林の年齢 人工林では,苗木を植栽した年が1年生
齢級林齢を5年単位で区分したもの Ⅰ齢級は1~5年生
面積複層林や混交林の場合は,上・下層、樹種ごとに細分化
材積胸高※直径3cm以上の立木の幹材積(胸高直径²×樹高×係数)
成長量一年間に立木が成長した量で,単位は㎥/年
林種人工林,天然林,伐採跡地,原野,湿地,採石地,採土地等の区分
道からの距離林道までの最短水平距離
林地の生産力植生・樹高・材積等から見た価値を指数化したもの(Ⅰ~Ⅴ・不適)
ゾーニング森林整備計画に基づく森林に期待する機能
施業種ゾーニングに基づく必要な伐採作業
森林簿の項目

森林計画図

土地の位置が確認できます。
地図として、png形式でダウンロードできます。
「森林の土地の所有者届出書」への添付などに使用します。

保安林関係

保安林指定の確認や、禁伐条件の有無などが確認できます。
これらの項目は、相続税の立木の評価に必要です。