市区町村での手続きは、届け出と書類の交付申請の2つがあります。
住所地や本籍地により、手続き先の市区町村が異なることもあります。
葬儀後すぐに手続きするもの、落ち着いたら手続きするもの、時期が来たら手続きするものがあります。
概要
市区町村ではどんな手続きがあるの?
届け出と書類の取得が必要になるの。
いつ頃手続きしたらいいの?
葬儀後すぐ、落ち着いたら、時期がきたら、でやるべき手続きがあるのよ。
事前に済ませたい手続き
前に聞いた、自分の住民票とかだね。
そう、忌引き期間中に済ませる手続きに必要になるの。
自分が相続人であることを証明する書類をを事前に取得しておくと、手続きがスムースに進みます。
忌引き期間中に済ませる手続き
葬儀が終わって一休みしたいんだけど...
実家が地方だと何度も来れないでしょ。
社会保険・年金と住民票の除票は手続きしておいた方がいいわよ。
故人の住民票の除票で相続関係が証明できるんだね。
固定資産税と、未支給年金の受け取り手続きも済ませておきましょう。
葬儀が終わって一段落ですが、被相続人の住所地の役所で済む手続きは、忌引き期間中に済ませましょう。
後日、電話や郵便でやりとりするよりも、窓口で相続人本人が手続きしたほうが、スムースに進みます
なお、手続きには時間がかかりますので、丸1日空けておくと余裕があります。
また、銀行の口座凍結と概算の残高把握、公共料金の休止・請求先変更なども、この期間に済ませておくと安心です。
手続きに持参するもの
自分の住民票 | コンビニ取得可 |
自分の戸籍謄本 | コンビニ取得可 |
自分の戸籍の附表 | コンビニ取得可 |
自分の身分証明書 | 免許証等 |
自分の印鑑 | 実印・認印・三文判 |
被相続人の健康保険証 | 探しておく |
被相続人の介護保険証 | 探しておく |
被相続人の年金手帳 | 探しておく |
被相続人の住民票の除票を取得する
自分が相続人の一人であることを証明するための書類です。
被相続人の本籍の記載のあるものが必要です。
戸籍の繋がりを確認
被相続人の住民票の本籍と、自分の戸籍謄本の従前戸籍が一致している
相続人が、結婚により親の戸籍を離脱した場合は一致しています。
これで、親子関係(相続人であること)が証明されます。
住民票の除票は、全体にバツが書かれ、「除票」の記載があります。
自分の戸籍謄本と、戸籍の附表の戸籍が一致している
戸籍謄本と戸籍の附表が繋がります。
戸籍の附表には、自分の現住所が記載されています。
これで、相続人の現住所が証明されます。
免許証等で本人であることを証明する
免許証等の住所氏名と、戸籍の附表の住所氏名が一致していることにより、自分が相続人のうちの一人であることが証明されます。
今後の役所・公共料金・銀行等での手続きでは、次の書類を提示して、相続人の一人であることを証明します。
- 被相続人の死亡診断書
- 被相続人の住民票の除票
- 自分の戸籍謄本
- 自分の戸籍の附表
- 免許証等
保険・年金関係の届け出
受付で、「父(または母)が亡くなったので、最初の手続きに来ました。」と言えば保険・年金の手続きを案内されます。
保険証や年金手帳なども、あれば持参します。
幾つかの書類へ記入しますが、担当がついて書き方を教えてもらえます。
県の共済に加入していた場合などは、郵送での手続きになります。
代表相続人の届け出
手続きの中で、代表相続人の届け出を求められます。
代表相続人には、保険料の納付書が送られてるので納付します。
ただし、後日還付されます。
保険料の請求処理は、手続き後すぐに停止できないようです。
また、健康保険から支払われる葬祭費(5万円程度)を振り込みで受け取ります。
未支給年金の請求
未支給年金は、代表相続人であれば受給できるわけではありません。
被相続人と同居していた配偶者・子・・・の順に請求権があります。
被相続人が独居していたときは、経済援助や定期訪問などの実績のある親族が請求できます。
この請求には、請求する親族の友人や同僚など、第三者の証明を受けた申立書の添付が必要です。
生前に、被相続人を親身にお世話をしていた親族が受け取るものです。
なお、未支給年金は相続財産ではないので、遺産分割や相続税の対象にはなりません。
落ち着いたら進める手続き
一段落したんだけど、次は何をするんだろう?
被相続人の戸籍謄本を取得するの。
名寄帳も必要になるわ。
相続用の戸籍謄本の取得って大変だって聞いたんだけど...
ケースバイケースね。
役所で確認しなが進めれば、ちゃんと取得できるわ。
名寄帳って聞いたことないんだけど、何に使うの?
名寄帳は、被相続人が持っている不動産のリストのことよ。
共有していた不動産も忘れずに申請してね。
郵送でも申請できるのかな?
そうね。
電話で手続き方法を確認してみてね。
落ち着いたら、相続人と相続財産を確定する準備を始めます。
被相続人の戸籍謄本を取得する
被相続人の住民票の除票と自分の戸籍謄本・附表で、自分が相続人のうちの一人であることは証明できました。
今度は、相続人全員を漏らしなくリストアップするため、被相続人の戸籍謄本を取得します。
なお、被相続人の死亡により、その戸籍に記録されている人が全員除籍になった謄本は、特に除籍謄本と呼びます。
また、死亡届の提出から戸籍上で被相続人が除籍されるまでは数日かかります。
被相続人の出生から死亡まで
相続手続きで必要となるのは、「被相続人の出生から死亡まで」の戸籍謄本とされていますが、これは、被相続人が記載されている全ての謄本とも言えます。
市区町村に申請するときに、「相続手続きに使う出生までの全て」と言えば、そこで取得できるものを全て出してもらえます。
ただし、これで全て網羅されているとは限りません。
被相続人が結婚で新戸籍に入っていれば、結婚前の戸籍謄本を旧戸籍の市区町村に申請して取得することになります。
どこまで遡るのか
話をややこしくしているのは、戸籍制度が2回変わったことによります。
1度目は、戦後の戸主制度の廃止、2度目は1994年の記載方法の電子化です。
制度が変わったことにより、旧版となった戸籍を改製原戸籍といいます。
戸主制度がある時代は、家督権を持つ人を戸主として一族の戸籍が作成されていましたが、新憲法の下、家庭(父・母・未婚の子)単位で戸籍を作成するようになりました。
このため被相続人が戦前生まれであれば、出生時に戸主であった、被相続人の祖父の戸籍にまず登録された可能性があります(その1)。
続いて、被相続人の父が家督相続して新たな戸主となると、その戸籍へ移記されます(その2)。
さらに戸主制度の廃止により、被相続人の父母と被相続人の家庭単位で構成された新たな戸籍へ移記されます(その3)。
今度は被相続人の結婚により新たな戸籍が作成され(その4)、電子化により戸籍全部事項証明書に入力されました(その5)。
このように被相続人が戦前生まれの人なら、単純に出生・結婚しただけでも5種類の戸籍謄本に記載され、全てを取得することが求められます。
被相続人が離婚・再婚を繰り返した場合など収拾がつかないときは、司法書士を絡めた方が得策かもしれません。
戸主の役割
戸主は、一族の長で家督権を持つものとして戸籍に記録されていました。
その構成員として親族一同が戸主の戸籍に登録されます。
士農工商の身分制度の下、一族として生業を持ち、協力して生活することが前提だった頃の名残です。
戸主は家督権として、一族の財産を管理する権利、一族の住所を指定する権利、一族の構成員を管理(婚姻や分家を承認・勘当)する権利を持っていました。
また、戸主は生業をもって一族を扶養する義務を負っていました。
いわば戸主は、一族株式会社の社長のような存在でした。
なお、戸主の相続発生原因には死亡の他に隠居があり、長男には家督権の相続放棄は認められていませんでした。
戸主が隠居するときは、分家するか一族の単なる構成員になって、長男に家督を譲っていました。
戸籍謄本は3通取得する
戸籍謄本は3通取得します。
上記の例だとすれば、5種類×3通で、15通取得することになり、手数料も1通750円として11,250円と高額になりますが、これには理由があります。
銀行での手続きを掛け持ちするため
銀行での残高証明の発行や、口座凍結解除手続きには、戸籍謄本を提示(返却されます)しますが、待ち時間が30分以上あります。
銀行にもよりますが、待ち時間の間に外出して、他の銀行の手続きへ行くことができます。
銀行の担当も、待たせるプレッシャーがなくなり、快く外出を認めてくれます。
ただし、外出時は預かり証の発行が必要とのことで、認めてくれない銀行もあります。
正しい謄本の見本とするため
銀行に戸籍謄本を提示すると、コピーを取って原本は返却されます。
このとき、謄本のページをシャッフルされる場合があります。
似たような紙が大量にあるので、再度ホチキスで綴じるときに間違うことも仕方ありません。
返却された謄本が正しく復元されているかの比較のため、1通はどこにも出さず正本として手元に保管しておきます。
相続登記と税務申告に原本を提出するため
相続税申告には原本の添付が必要なので、ここで1通消費します。
1通はその他の手続きの予備として、1通は相続資料として保管します。
被相続人が不動産を所有していたとき
名寄帳を取得する
固定資産税の納税通知書を発見した、どこそこに土地を持っていると聞いていたなど、被相続人が不動産を所有していたときは、その不動産のある市区町村から「固定資産名寄台帳」を取得します。
名寄帳には、被相続人名義として市区町村に登録されている全ての不動産が記載されています。
請求方法は、窓口申請か郵送になります。
また、「共有名義もあればそれも併せて」と依頼します。
名寄帳を取得する理由
被相続人が所有する不動産の情報が一覧できます。
評価額と課税額は毎年4月に更新されるので、それまでは評価証明を取得しても無駄になります。
また、名寄帳であれば、評価証明と公課証明の両方の情報が記載されています。
共有名義のものも取得することが重要です。
固定資産税が非課税の土地を共有で所有していたときは、固定資産税の納税通知書や被相続人名の評価証明書には記載されません。
名寄帳で確認しておかないと、財産の把握漏れに繋がります。
なお、相続登記や相続税申告に使用する評価証明は、その手続き前に改めて取得します。
固定資産税の代表相続人を指定する
被相続人が亡くなった年の固定資産税は、相続人が支払うことになります。
市区町村から指定届が郵送されるので、代表相談人を記入して返送します。
固定資産税の支払原資は相続財産から
未払の固定資産税の支払は、相続税上の費用となります。
遺産分割が終わるまでは、代表相続人の立替払いとなります。
時期が来たら手続きするもの
その他の市区町村の手続きって何があるの?
固定資産税の評価証明は、毎年4月に更新されるの。
相続開始がその前なら、更新を待って取得することになるわ。
農地や山林の取得届は、相続による移転登記が終わったら提出するのよ。
評価証明を取得する
取得は4月以降に
不動産のある市区町村で取得します。
固定資産の評価額は、毎年4月に更新されます。
評価証明は相続登記と相続税申告に必要になるので、更新後のものを取得します。
なお、遺産分割協議などで、更新前に土地・建物の金額を知りたいときは、名寄帳に記載された評価額を参考にします。
非課税資産に注意する
固定資産税の非課税資産には、登記申請にかかる印紙税の計算と、相続税の土地の評価のために「近傍価額」が必要になります。
記載がなければその場で確認しましょう。
相続登記後に必要になる届け出
農地と山林の取得届
農地を相続したときは、「農地法第3条の3第1項の規定による届出書」の提出が必要です。
森林を相続したときは、「森林の土地の所有者届出書」の提出が必要になる場合があります。
農地・森林の取得届の提出先
農地 | 森林 | |
---|---|---|
提出書類 | 農地法第3条の3第1項の 規定による届出書 | 森林の土地の所有者届出書 |
添付書類 | 不動産登記簿謄本 | 森林の位置を示す地図 不動産登記簿謄本 |
提出先 | 農業委員会 | 産業課など |
土地の地目 | 田・畑・牧場 | 限定されない |
提出期限 | 取得後遅滞なく | 取得後90日以内 |
無届の場合 | 過料 | 過料 |
書式の入手 | 市区町村のページ | 市区町村のページ |
その他 | 受理通知書が送付される | 地域森林計画内の森林に限る |