相続税上の財産に、森林と立木があったときの評価方法です。
森林簿と森林の立木の標準価格表などを参照して評価額を計算します。
森林簿は各都道府県のサイトから、森林の立木の標準価格表などは国税局のサイトから取得します。
概要
保安林を相続したんだ。
キャンプしに行こうかな。
山菜狩りやキノコ狩りもできそうね。
でもその前に山林の土地と立木の評価をしなくちゃね。
森林簿に登録されている山林は、森林簿を参照して評価額を計算します。
また、同時に立木の評価額も計算します。
森林簿を参照する
森林簿なんて聞いたことない...
国有林は営林署、民有林は県の林務課が管理しているのよ。
森林簿はペーバーだけど、県のサイトでも情報は公開されているわ。
森林簿を入手する
森林簿は、各都道府県のサイトで公開されています。
静岡県の例
森林簿(Webシステム)に地番を指定して検索します。
森林簿上では、一つの地番がさらに小分けされている場合があるので、該当する全ての地番の情報を取得します。
- 林班 尾根・沢などの地形で区切った、約50haの区画
- 準林班 林班を約5haに区切った区画
- 小班 準林班を、同じような樹種・樹齢で括った区画
- 枝番 小班をさらに細かくした区画
森林簿の詳細情報を取得する
森林簿(Webシステム)から該当する地番の詳細画面を順に表示します。
森林簿の情報を表にまとめる
ブラウザ上で詳細項目と値の部分をコピーし、Excelへ値(テキスト)貼り付けします。
該当する地番全ての行を参照し、整形して表にまとめます。
森林簿の項目
樹種 | スギ,ヒノキ,マツ,クヌギなどの樹木の種類 |
混交歩合 | 2種類以上の樹種が混在する森林で、樹種別の立木材積による百分率 |
林齢 | 森林の年齢 人工林では,苗木を植栽した年が1年生 |
齢級 | 林齢を5年単位で区分したもの Ⅰ齢級は1~5年生 |
面積 | 複層林や混交林の場合は,上・下層、樹種ごとに細分化 |
材積 | 胸高(地上1.2m)直径3cm以上の立木の幹材積(胸高直径²×樹高×係数) |
成長量 | 一年間に立木が成長した量で,単位は㎥/年 |
林種 | 人工林,天然林,伐採跡地,原野,湿地,採石地,採土地等の区分 |
道からの距離 | 林道までの最短水平距離 |
林地の生産力 | 植生・樹高・材積等から見た価値を指数化したもの(Ⅰ~Ⅴ・不適) |
ゾーニング | 森林整備計画に基づく森林に期待する機能 |
施業種 | ゾーニングに基づく必要な伐採作業 |
森林の面積の計算
森林簿、初めて見た!
いろいろ勉強になったよ。
ところで、登記簿の面積があるのに、なんでまた面積を合計するの?
登記簿の面積があまり正確でないからよ。
というのも、山林なんて滅多に測量するものじゃいから、大昔の面積をそのまま使っているの。
大昔じゃ、山を正確に測るのはムリだよね。
税金の関係で官庁は広く、所有者は狭くしたいって気持ちもあったようね。
だから、根拠があれば一番狭い面積を使っていいのよ。
森林簿の面積を合計します。
縄伸び・縄縮みの可能性があるので、森林簿の面積合計と公簿面積を比較し、小さい方を採用します。
立木の評価額の計算
立木ってどう評価するの?
やっぱり売れる値段?
そうね。
でも市場価額なんかではなく、国税庁の標準価格表などから機械的に計算するの。
ボクのは保安林だし、森林組合は解散してるし、実際に木を売るのは不可能だよ。
保安林控除もあるし、山林や立木はかなり低い評価額になるよ。
林業が盛んな地域なら、それなりの評価額になるかもね。
森林簿の情報を基に、立木の評価額を計算します。
立木の標準価格を求める
財産評価基準書路線価図・評価倍率表のページ(少し下の方)から、「森林の立木の標準価格表」をダウンロードします。
樹種と樹齢から1ha当りの単価を求めます。
「森林の立木の標準価格表」にない樹種は、需要がないなどで売買事例がなければ評価0とします。
地味級を求める
地味級判定表を確認する
地味級の判定方法は、国税庁のページで公表されています。
地味級判定表の樹齢(林齢)と材積から地味級を求めます。
上級・中級・下級のいずれかになります。
立木度を求める
立木度の判定方法は、国税庁のページで公表されています。
人工林は「密」、自然林は「中庸」です。
地利級を求める
地利級の判定方法は、国税庁のページで公表されています。
また、ここで「総合等級」もダウンロードできます。
判定表項目 | 定義 | 使用する距離 |
小出し距離 | 倒伐場所からトラック等への積載場所までの距離 | 森林簿の「道までの距離」 |
小運搬距離 | 積載場所から製材所等までの距離 | 最寄りの市街地までの距離 |
総合等級を求める
総合等級表は、上記の国税庁のベージからダウンロードします。
地味級・地利級・立木度から総合等級を求めます。
保安林控除を確認する
森林簿の保安林登録を確認する
地目が保安林である場合はもちろん、保安林指定されているかどうかの確認のため、森林簿(Webシステム)から地番を指定して検索します。
保安林指定がない場合は、保安林控除はありません。
指定施業要件(伐採方法)が、皆伐・択伐・禁伐のどれにかかっているか確認します。
控除割合を確認する
保安林の控除割合は、国税庁のページで公表されています。
一部皆伐 | 伐採種を定めない保安林 |
択伐 | 森林簿の保安林情報が「択伐」となっているもの |
単木選伐 | 国立公園の第1種特別地域で風致維持に支障のない場合の森林 |
禁伐 | 森林簿の保安林情報が「禁伐」となっているもの 国立公園等の特別保護地区 第1種特別地域で風致維持に支障のない場合以外の森林 |
立木の評価額を求める
相続の場合は、立木の評価額に85%を掛けたものになります。
また、相続人が森林経営計画を継続する場合は、さらに95%を掛けたものになります。
立木の評価額=(標準価格×総合等級×面積)×85%×【(1-保安林控除)】×【95%】
※【】内は該当する場合のみ
また、計算結果は「山林・森林の立木の評価明細書」に記載して相続税申告書に添付します。